世界中で高く評価されている韓国映画の巨匠イ・チャンドン。現代社会のタブーにも果敢に切り込み、それでいて決して冷静さを失わず抑制された語り口を貫く唯一無二の作風は観客の胸を打ち、また世界のクリエーターに与えた影響は計り知れない。
特集上映では、代表作『シークレット・サンシャイン』を含む全監督作6作品と、イ・チャンドンを敬愛する仏のドキュメンタリー監督アラン・マザールが手掛けた日本初公開の新作ドキュメンタリーが全て4Kで鑑賞できる。特に『シークレット・サンシャイン』『ポエトリー アグネスの詩』『グリーンフィッシュ』は、これまでBlu-ray化も配信もされていなく、貴重な上映となる。
レストア作業は、イ・チャンドンが自ら指揮を執り、作品が持つ当時の空気感を残したまま、細部までこだわり抜いて作品に新たな命を吹き込んだ。
教鞭を執る傍ら、小説家として活動し幾つかの著書も出版。43歳の時に、『グリーンフィッシュ』で監督デビュー。続く『ペパーミント・キャンディー』では現在から過去へ時間を遡る方法で、1人の男の人生をエモーショナルに描き、韓国のみならず海外でも上映され、世界中でその名を知られるようになる。『オアシス』では、男女の究極の愛を描き、ヴェネチア国際映画祭で監督賞、主演のムン・ソリは新人女優賞に輝いた。2002年、韓国文化観光部の長官に就任する。その後、『シークレット・サンシャイン』を発表。過酷な運命に翻弄される主人公を演じたチョン・ドヨンは、カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞する。その後、『ポエトリー アグネスの詩』がカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞、『バーニング 劇場版』が同映画祭で国際批評家連盟賞他、多数の賞を受賞。新作を発表するごとに、国内外から注目を浴びている。
【レストア作業について】 当時の映像の雰囲気や印象、そして感情を味わえることを第一に作業しましたので、そこに注目して観てもらえたらと思います。
【今回の日本での上映について】 私はいつも韓国のほか日本、欧米など遠くにいて違う文化圏にいる観客であっても、人間であれば、根本的に共有や理解ができる、意思の疎通ができると思っています。本上映を通して、私たち人間について、人生について、皆さんと分かち合えればと思います。新しい日本の観客の皆さんとお会い出来ることを楽しみにしています。
イ・チャンドンが1992年に発表した小説集「鹿川(ノクチョン)は糞に塗(まみ)れて」の邦訳版が、7月28日に発売される。本書に収録される表題作と中篇「星あかり」については、ドキュメンタリー『イ・チャンドン アイロニーの芸術』本編で、著者自らが舞台となった土地を案内しながら執筆当時を語るシーンもある。この機会に、映画監督としてだけではなく、作家としてのイ・チャンドンの作品も是非お楽しみください。
99分のタイムトラベル。 見えない物の真実を探すー
イ・チャンドンが制作の原点と 人生を語るドキュメンタリー
イ・チャンドン作品に魅了されたフランスのドキュメンタリー監督アラン・マザールの脚本を元に、被写体であるイ・チャンドン自らが総力を上げてコラボレーションした、これまでにない映像作品。かつてないほど率直な本人の述懐と、監督作全6作品を現在から過去へと辿り、ゆかりの地に自ら足を運ぶ“聖地巡礼”で振り返る。ソン・ガンホ、ソル・ギョング、チョン・ドヨン、ムン・ソリといった名優たちが撮影当時の思い出を語る点も見逃せない。
彼女は一体、なぜ消えたのか?
村上春樹の小説を原作とした 極上ミステリー!
第71回カンヌ国際映画祭 国際批評家連盟賞受賞
小説家を目指しながら、バイトで生計を立てるジョンスは、偶然幼馴染のヘミと再会する。ヘミからアフリカ旅行へ行く間、飼っている猫の世話を頼まれるジョンス。旅行から戻ったヘミはアフリカで出会ったという謎の男ベンを紹介する。ある日、ベンはヘミと共にジョンスの家を訪れ、「僕は時々ビニールハウスを燃やしている」と、秘密を打ち明ける。そこから、ジョンスは恐ろしい予感を感じずにはいられなくなるのだった。
詩作教室に通う初老の女性。
詩を綴ることで、彼女が見つけた 人生の光と影、美しさとは―?
第63回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
釜山で働く娘の代わりに、中学生の孫息子ジョンウクを育てているミジャ。ある日、町の文化センターで偶然見つけた詩の講座を受講し、人生で初めて詩を書くことになる。詩のテーマを見つけるために、これまで何気なく過ごしていた日常を思い返し、美しさを探そうとするミジャ。今まで見てきた全ての物を新鮮に感じ、少女のように心ときめく彼女だったが、孫が自殺した少女の死に深く関わる少年グループの一員であることが発覚し、世の中が自分の思うように美しくはないことを知る。
悲しみの底から抜け出そうとする女性の葛藤を描く、魂が震える傑作。 第60回カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた、 主演チョン・ドヨンの観る者を圧倒する演技にも注目
シネは事故で亡くなった夫の故郷で再出発するため、息子とソウルからミリャン(密陽)に引っ越して来る。車が途中で故障し、レッカー車を呼ぶと、自動車修理工場を営むジョンチャンが現れた。彼の好意でシネはピアノ教室を開き、順調に新生活を送っていたが、ある日息子が誘拐され…。
世の中から疎外された二人が知った “はじめての愛”の物語。
第59回ヴェネチア国際映画祭最優秀監督賞、新人俳優賞(ムン・ソリ)、 国際批評家連盟賞受賞
兄の身代わりとなり投獄され、最近出所した青年ジョンドゥは、家族のもとへ戻るものの、皆から煙たがられていた。ある日、被害者家族のアパートを訪れた彼は、寂しげな部屋で一人取り残された女性コンジュと出会う。脳性麻痺を患うコンジュは、部屋の中で空想の世界に生きていた。二人は互いに心惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくが、周囲の人間は誰一人として彼らを理解しようとはしなかった。そして、ある事件が起こる…。
激動の韓国現代史を背景に、 ある男の20年の記憶を辿る時間旅行。
第37回大鐘賞映画祭最優秀作品賞他、 5部門受賞。 海外でも広く上映され、イ・チャンドンの名を一躍有名にした初期の傑作。
1999年、春。旧友たちとのピクニックに場違いな恰好で現れたキム・ヨンホ。そこは、20年前に初恋の人スニムと訪れた場所だった。仕事も家族も失い、絶望の淵に立たされたヨンホは、線路の上で向かってくる列車に向かって「帰りたい!」と叫ぶ。すると、彼の人生が巻き戻されていく。自ら崩壊させてしまった妻ホンジャとの生活、互いに惹かれ合いながらも結ばれなかったスニムへの愛、兵士として遭遇した光州事件。記憶の旅は人生のもっとも美しく純粋だった時に辿り着く。
監督デビュー作品。 アウトサイダーの男女3人が織りなす 喪失と希望の物語。
『シュリ』『8月のクリスマス』で 知られるハン・ソッキュ主演。 第35回大鐘賞映画祭審査員特別賞他、 5部門受賞
兵役を終えて汽車で故郷に向かっていたマクトンは、赤いスカーフを巻いた女性が、チンピラに絡まれているのを助ける。しかし彼らと喧嘩になり、助けた女性と言葉を交わすことなく手元に彼女の赤いスカーフだけが残る。暫くして、ミエと名乗る女性から連絡が来る。彼女は赤いスカーフの女性で、ナイトクラブのステージに立ち、新興の裏組織のボス、テゴンの情婦でもあった。ミエの口利きと持ち前の負けず嫌いの性格で組織の一員になったマクトンは、テゴンに気に入られ頭角を表す。ミエへの恋心を抱きながらも、テゴンへの忠誠を誓うマクトン。その頃、対立組織のボスが刑期を終えて出所し、マクトンらに圧力をかけてくる。
本スケジュールは
ヒューマントラストシネマ有楽町のものとなります。
他劇場については上映劇場ページをご覧下さい。
※順不同